免震支承材

免震支承材

免震支承材の履歴特性

鉛プラグ挿入型積層ゴム

a) LRB統一型

複数メーカーの統一仕様による「歪依存型バイリニア特性」です。

鉛プラグ入り積層ゴム概略図

(1) 二次剛性 $K_d(γ)$(kN/cm)

$K_d (\gamma) = C_{Kd}・K_d$ $K_d = ( K_r + K_p )$

$K_r$ :積層ゴムの水平ばね定数

$K_r = G_r \frac{A_r}{H}$

$G_r$:ゴムのせん断弾性率

$A_r$ :積層ゴムの断面積

$H$:ゴム総厚

$K_p$ :鉛プラグによる水平剛性増加分

$K_p = α_p \frac{A_p}{H}$

$α_p$:鉛の見掛けのせん断弾性係数

$A_p$:鉛プラグ断面積

$C_{Kd}$:降伏後剛性のひずみ依存による修正係数

$$ C_{Kd} = \begin{cases} 0.779γ^{0.41} &(γ<0.25) \\\\\\ γ^{-0.25} &(0.25≤γ<1.0) \\\\\\ γ^{-0.12} &(1.0≤γ<2.5) \end{cases} $$

$γ$:歪

(注)  $G_r,α_p$については次項の付表-1 を参照してください。

(2) 切片荷重 $Q_d(γ)$

$Q_d(\gamma) = C_{Qd}・Q_d$ $Q_d = \sigma _{pb}・A_p$

$σ_{pb}$:鉛の降伏せん断応力度(kN/cm2)

$C_{Qd}$:降伏荷重のひずみ依存による修正係数

$$C_{Qd} = \begin{cases} 2.036γ^{0.41} & (γ≤0.1) \\\\\\ 1.106γ^{0.145} & (0.1<γ<0.5) \\\\\\ 1 & (0.5≤γ) \end{cases}$$

γ:歪

(注)  $σ_{pb}$については次項の付表-1 を参照してください。

(3) 初期剛性 $K_u$

$K_u = \beta・K_d$

β:初期剛性の二次剛性に対する倍率

β=10~15とし、G4はβ=13、G6はβ=10を推奨

(4) 等価水平剛性 keq

$k_{eq} = \frac{Q_d}{γ・H} + K_d$

(5) 等価粘性減衰定数 $H_{eq}$

$H_{eq}=\frac{2}{π} \cdot \frac{{Q} _{d} \lbrace \gamma \cdot H-\frac{{Q} _{d}}{{(β-1)K} _{d}} \rbrace }{{k} _{eq} \cdot (γ \cdot H)^2}$

(6) 補正後の降伏後剛性 $K'_d$および降伏荷重 $Q'_d$

$K'_d = {\alpha} _{Kd}・{K} _{d}$ $Q'_d = {\alpha} _{Qd}・{Q} _{d}$

$α_{Kd}:K_d$の補正係数

$α_{Qd}:Q_d$の補正係数

ここで、温度依存性について、温度 $t_0$への換算式は次式とします。

$K_d(t_o) = K_d(20)・exp(-0.00271(t_o-20)$ $Q_d(t_o) = Q_d(20)・exp(-0.00879(t_o-20)$

b) オイレス工業歪み依存Tri-Linear型

オイレス工業鉛プラグ挿入型積層ゴム支承の「歪み依存トリリニア特性」です。

ここで、

$K_d$ :降伏剛性(kN/m)

$K_d = 0.779・\gamma^{-0.43} ・K_{d100}$[γ<0.25]
$K_d = \gamma^{-0.25}・K_{d100}$[0.25≦γ<1.0]
$K_d = \gamma^{-0.12}・K_{d100}$[1.0≦γ<2.5]

$K_{d100}$:せん断ひずみγ=100%時の降伏後剛性

$K_1$ :第1剛性

$K_1 = \beta _1・K_d$

$\beta _1 = K_1/K_d$(推奨値:45)

$K_2$ :第2剛性

$K_2 = \beta _2・K_d$

$\beta _2 = K_2/K_d$(推奨値:2.5)

$Q_d$ :降伏荷重

$Q_d = 2.036・ \gamma ^{0.41}・Q_{d100}$[γ≦0.1]
$Q_d = 1.106・ \gamma ^{0.145}・Q_{d100}$[0.1<γ<0.5]
$Q_d = Q_{d100}$[0.5≦γ]

$Q_{d100}$:せん断ひずみ $γ=100%$時の降伏荷重

$Q_{y1}$ :第1折れ点荷重

$α_1$$Q_{y1}/Q_d$(推奨値:0.7)

復元力特性タイプ(=135)を指定されたバネについては、応答計算に入る時に初期剛性を再計算します。

初期剛性は歪が0.05 における $K_1$とし、以降下記の規則に従って弾塑性の判定が行われます。

① |γ|≦0.05 の範囲においては、γ=0.05 として式1、式4、式5により求まるトリリニアルールに従って動きます。

② |γ|>0.05 の範囲におけるスケルトン上の動きは式1、式2または式3で求まる $K_d$を瞬間剛性とします。

③ スケルトンからの除荷時において、式1~3、式4および式5~7によりトリリニアルールを設定します。

④ トリリニアループから最大変形をこえると、スケルトン上に戻ります。

以降、②、③を繰り返します。

c) オイレス工業修正H-D型

オイレス工業鉛プラグ挿入型積層ゴム支承の「歪み依存修正H-D特性」です。

弾性すべり支承

すべり支承履歴特性は摩擦ばね要素による標準型バイリニアとします。

滑っている状態ではばね剛性は作用しないため、完全バイリニア型になります。

ブリヂストン製の装置の場合、ユーザー指定により速度を直接指定して摩擦係数を変更することが可能です。速度を指定した場合、下記の計算により摩擦係数を設定します。

(SPシリーズ) $\mu = 0.0424 \sigma^{-0.510} V^{0.0894}$      (σ=18N/mm2、V:速度mm/s)

(SLシリーズ) $\mu = (0.112-0.00276 \sigma) V^{0.0863}$    (σ=10N/mm2、V:速度mm/s)

(SKシリーズ) $\mu = (\sigma/18)^{-0.51} \times (0.0073V^{0.0894})$   (σ=18N/mm2、V:速度mm/s)

高減衰ゴム系積層ゴム

ブリヂストン

ブリヂストン高減衰積層ゴムです。各タイプの係数は以下の通りです。

・E6タイプ

$Geq$$2.309 - 4.327 \gamma + 4.456 \gamma ^2 - 2.379 \gamma ^3 + 0.630 \gamma ^4 - 0.0649 \gamma ^5$

$Heq$$0.1894 + 0.0664 \gamma - 0.0353 \gamma ^2 + 0.0041 \gamma ^3$

$U$$0.3726 + 0.0956 \gamma - 0.0741 \gamma ^2 + 0.0113 \gamma ^3$

・E4タイプ

$Geq$$1.308 - 2.438 \gamma + 2.640 \gamma ^2 - 1.483 \gamma ^3 + 0.4086 \gamma ^4 - 0.043 \gamma ^5$

$Heq$$0.227 + 0.0120 \gamma - 0.0088 \gamma ^2 + 0.0037 \gamma ^3$

$U$$0.379 + 0.0069 \gamma - 0.0046 \gamma ^2 + 0.0026 \gamma ^3$

・X6Rタイプ

$Geq$$G_0 \times (2.855 - 3.878 \gamma + 2.903 \gamma ^2 - 1.016 \gamma ^3 + 0.1364 \gamma ^4)$

$Heq$$H_{eq0} \times (0.9150 + 0.2364 \gamma - 0.1804 \gamma ^2 + 0.02902 \gamma ^3)$

$U$$u_0 \times (0.9028 + 0.2711 \gamma - 0.2083 \gamma ^2 + 0.03421 \gamma ^3)$

$G_0$ = $0.620$$H_{eq0}=0.240、u_0=0.408$

・X4Rタイプ

$Geq$$1.145 - 1.583 \gamma + 1.192 \gamma ^2 - 0.416 \gamma ^3 + 0.054 \gamma ^4$

$Heq$$0.216 - 0.008 \gamma + 0.018 \gamma ^2 - 0.006 \gamma ^3$

$U$$0.3617 - 0.0132 \gamma + 0.0325 \gamma ^2 - 0.0110 \gamma ^3$

・X3Rタイプ

$Geq$$0.8703 - 1.1028 \gamma + 0.7283 \gamma ^2 - 0.2213 \gamma ^3 + 0.0255 \gamma ^4$

$Heq$$0.166 - 0.006 \gamma + 0.015 \gamma ^2 - 0.005 \gamma ^3$

$U$$0.2720 - 0.0105 \gamma + 0.0262 \gamma ^2 - 0.0087 \gamma ^3$

・X4Sタイプ

$Geq$$1.145 - 1.583 \gamma + 1.192 \gamma ^2 - 0.416 \gamma ^3 + 0.054 \gamma ^4$

$Heq$$0.236 - 0.009 \gamma + 0.020 \gamma ^2 - 0.007 \gamma ^3$

$U$$0.4001 - 0.0190 \gamma + 0.0401 \gamma ^2 - 0.0132 \gamma ^3$

東洋ゴム

東洋ゴム高減衰積層ゴムです。

HRBおよびSHRBが選択可能です。

SHRB-E4タイプおよびSHRB-E6タイプはブリヂストン高減衰ゴムと同様の計算を行います。

鉄粉・ゴム混合材プラグ挿入型積層ゴム(ブリヂストン)

鉄粉・ゴム混合材プラグ挿入型積層ゴム(eRB)は歪依存バイリニア型です。各係数は以下の通りです。

・G0.4タイプ

$Ckd$$1.481 - 0.6781 \gamma + 0.2166 \gamma ^2 - 0.01958 \gamma ^3$

$Cqd$$0.2036 + 0.8047 \gamma + 0.1172 \gamma ^2 - 0.1505 \gamma ^3 - 0.02502 \gamma ^4$

鉄粉・ゴム混合材プラグ挿入型積層ゴムは下記が選択できます。

・旧認定(ゴム径・プラグ径による低減無し)

・現認定MVBR-0508(プラグ径の関数による低減を考慮)

現認定 MVBR-0508を選択した場合は下記式で二次剛性、切片荷重の低減を考慮します。

No.項目基準値
1.二次剛性$K_d=D_{Kd}(D_p)×(G_r×A_r/H_r+α_p/H_r)$
$D_{Kd}(D_p)$:下式にて与えられるプラグ径 $D_p$に対する $K_d$の依存式
$D_{Kd}$ = $1 (D_p≦180)$
$-2.161×10-^3(D_p-180)+1(180<D_p)$
$α_p$:ひずみ100%時におけるプラグの見かけのせん断弾性率(4.7N/mm2)
2.切片荷重$Q_d$ = $D_{Qd}(D_p)×τ_p×A_p$
$D_{Qd}(Dp)$:下式にて与えられるプラグ径 $D_p$に対する $Q_d$の依存式
$D_{Qd} = 1 (D_p≦200)$
$-4.279×10-^3(D_p-200)+1 (200<D_p)$
$τ_p$:ひずみ100%時のプラグの降伏応力(6.446N/mm2)

$A_r$: ゴム部分の断面積(mm2)

$H_r$: ゴム総厚(mm)

$A_p$: プラグ面積(mm2)

$G_r$: ひずみ100%時におけるゴムのせん断弾性率(0.385N/mm2)

U型ダンパー

標準バイリニア型でモデル化します。

積層ゴム一体型U型ダンパーとして配置した場合、並列して天然ゴム系積層ゴムが配置されます。

錫プラグ挿入型積層ゴム

錫プラグ挿入型積層ゴム免震部材のモデル化です。

a) 歪み依存Bi-Linear

錫プラグ入積層ゴム 復元力特性モデル(歪依存型バイリニアモデル)

(1) 二次剛性 $K_2$

$K_2 = \frac{G \cdot A_r}{n \cdot t_r}$

$G$ :ゴム材料のせん断弾性率

$A_r$ :ゴムの受圧面積

$n$ :ゴム層数

$t_r$ :ゴム1 層厚さ

$K_2(\gamma) = (0.997 \times \gamma^{-0.403})K_2( \gamma _{100})$(γ<1.0)

$K_2(\gamma) = (1.0 + (-0.313)In(\gamma)) K_2( \gamma _{100})$ (γ≧1.0)

$γ$ :ひずみ

$γ_{100}$ :ひずみ100%

(2) 切片荷重 $Q_d$

$Q_d = A_p・\tau _d$(kN)

$A_p$ :錫プラグ断面積 (cm2)

$τ_d$ :錫プラグ降伏応力度 (kN/cm2)

$Q_d(\gamma) = (1.0 + 0.013In(\gamma))Q_d(\gamma _{100})$(γ<1.0)

$Q_d(\gamma) = (1.0 + (-0.079)In(\gamma))Q_d(\gamma _{100})$(γ≧1.0)

b) 歪み依存Tri-Linear

(1) せん断歪み100%時降伏後剛性 $K_{p100}$

$K_{p100} = \frac{G \cdot A_r}{n \cdot t_r}$

$G$ :ゴム材料のせん断弾性率

$A_r$ :ゴムの受圧面積

$n$ :ゴム層数

$t_r$ :ゴム1 層厚さ

$K_p(\gamma) = (0.997 \times \gamma^{-0.403})・K_{p100})$(γ<1.0)

$K_p(\gamma) = (1.0 + (-0.313)In(\gamma))・K_{p100}$(γ≧1.0)

$γ$ :ひずみ

$γ_{100}$ :ひずみ100%

(2) せん断歪100%時の切片荷重 $Q_{d100}$

$Q_{d100} = A_p・\sigma _d$(kN)

$A_p$ :錫プラグ断面積 (cm2)

$σ_d$ :せん断歪み100%時錫プラグ降伏応力度 (kN/cm2)

$Q(\gamma) = (1.0 + 0.013In(\gamma))Q_{d100}$(γ<1.0)

$Q(\gamma) = (1.0 + (-0.079)In(\gamma))Q_{d100}$(γ≧1.0)

転がり支承

履歴特性は標準型バイリニアとします。

折れ点耐力は軸力一定を仮定し、長期軸力と摩擦係数から計算します。第2剛性倍率は1/10000とします。また、摩擦係数μは下記により計算します。

$Q1 = \mu・P_V$ $\mu = (1.2+7.8 \times P_V/ P_o)/1000$

$Pv$ :長期軸力

$Po$ :静定格圧縮荷重

また、初期剛性は変形が0.2mmに達するまで維持するものと仮定して復元力特性を設定します。

鉛ダンパー

標準バイリニア型でモデル化します。

球面すべり支承

球面すべり支承の計算モデルでは時々刻々の支承材に生じる速度によって以下の式により摩擦係数が計算されます。

$\mu = \mu _0・(1.0 - 0.55・e^{-0.019・|V|})$(MNタイプ)

$\mu = \mu _0・(1.03 - 0.55・1.5^{-0.018・|V|})$(LNタイプ)

$μ$:すべり摩擦係数 $μ_0$:標準摩擦係数 $V$:層間速度(mm/s)

標準摩擦係数 $μ_0$の面圧依存性は以下の計算式により算出して考慮します。

(MNタイプ)

$μ_0$ = (基準摩擦係数 0.043)×(面圧補正係数)

(面圧補正係数) = 2.03×σ-0.19+0.068

(LNタイプ)

$μ_0$ = (基準摩擦係数 0.013)×(面圧補正係数)

(面圧補正係数) $= 20×σ-0.9+0.5$

σ :長期支持荷重

◇補正係数の算出例(MNタイプの場合)

補正係数=(製造ばらつきの補正係数)×(気温の補正係数)×(繰り返しの補正係数)

ここで、

・製造ばらつきの補正係数

製造による摩擦係数のばらつきの絶対値は、基準摩擦係数0.043(基準温度、基準面圧)に対して±0.01としています*注1。したがって、

製造ばらつきの補正係数+側最大: $(0.043+0.01)/0.043=1.233$

製造ばらつきの補正係数-側最大: $(0.043-0.01)/0.043=0.767$

となります。

・気温の補正係数

摩擦係数の気温に対する依存性は、基準温度20℃の時の標準摩擦係数に対する比として以下のような依存式として表されます。

気温の補正係数:温度依存式 $y=1.258 × exp(-0.011 × T)$

T :想定する環境温度(℃)

ここで、気温の補正係数が+側になるのは低温時、-側になるのは高温時です。

例えば、

0℃ (温度が低い側)の場合の気温の補正係数:1.258

30℃(温度が高い側)の場合の気温の補正係数:0.904

となります。

・繰り返しの補正係数

繰り返し変形によって生じるすべり面の温度上昇による摩擦係数への影響は、基準温度20℃の時の標準摩擦係数に対する比として以下のように考えています。

繰り返しの補正係数:

補正係数の+側、-側とも、繰り返しによる温度上昇により0.8

以上のことから、補正係数の+側は、

(製造ばらつきの補正係数+側最大)×(温度が低い場合の気温の補正係数)×(繰り返しによる補正係数0.8)

補正係数の-側は、

(製造ばらつきの補正係数-側最大)×(温度が高い場合の気温の補正係数)×(繰り返しによる補正係数0.8)

となります。

例えば、補正係数の+側は、低温側の環境温度を10℃と想定する場合、製造のばらつき1.213、気温の補正係数1.258、繰り返しによる補正係数0.8 を掛け合わせ、1.221 となります。

同様に、補正係数の-側は、高温側の環境温度を30℃と想定する場合、製造のばらつき0.787、気温の補正係数0.904、繰り返しによる補正係数0.8 を掛け合わせ、0.569 となります。

*注:直近の摩擦係数のばらつきについては、メーカーにお問い合わせ下さい。