耐震壁(壁エレメントモデル)の剛性
耐震壁(壁エレメントモデル)の断面性能
耐震壁は壁エレメントモデルでモデル化されます(指定により、平面応力要素、板要素でモデル化することも可能です)。全体としての断面性能は、壁柱の断面性能、側柱の断面性能および上下大梁の断面性能により表現されます。
壁エレメントモデルは、鉛直の梁要素(間柱)を両端ピンの剛梁ではさみ込んでモデル化し、剛梁と間柱は剛接合、剛梁の両端はピン接合となっています。このため、四隅の節点の水平・上下の変形が間柱に伝達されます。なお、剛梁は実際に梁要素が存在するわけではなく、剛域変換によって剛梁の両端の節点の変位が間柱に伝達されます。
壁柱の断面性能
軸剛性 :壁板部分の断面積から計算します(鉄筋剛性を考慮します)
曲げ剛性 :壁板部分の断面にもモーメントから計算します(鉄筋剛性を考慮します)
側柱部分のローカル断面2次モーメントは考慮しません。
せん断剛性 :壁板部分の断面および側柱部分の断面から計算します。
その際、下式による形状係数および開口による低減率rを考慮します。
$\kappa = \frac{3(1+\xi)}{5(1-\xi^3(1-\eta))^2} \left[\eta+\xi(1-\eta) \left( \frac{15}{8}(1-\xi^2)^2-\xi^4\eta \right) \right]$ $r = 1-1.25 \sqrt{ \frac{h_0 \cdot l_0}{h \cdot l}}$側柱の断面性能
軸剛性 :通常の柱と同様に計算します。
曲げ剛性 :通常の柱と同様に計算します。
ただし、耐震壁面内方向は両端ピンのためモーメントを負担しません。
せん断剛性 :通常の柱と同様に計算します。
ただし、耐震壁面内方向は両端ピンのためせん断力を負担しません。
上下大梁の断面性能
通常の大梁に対し、倍率を乗じた剛性を採用します。倍率は剛性計算条件で設定できます。既定値は100倍となります。
耐震壁の判定
耐震壁の条件は下記を満たすものとして取り扱います。ただし、下記によらず強制的に耐震壁とみなして壁エレメントモデルとしてモデル化する指定も可能です。
- スリットがないこと。
- 壁厚が120mm以上であること。
- 開口周比r0≦0.4を満たすこと。
(指定によりL0/L、H0/Hも条件に含めることが可能です)
複数開口の取り扱い
複数の開口部については、「等価開口とする」「包絡する」「包絡開口・等価開口自動判定」の3つから選択できます。それぞれ下記のように開口を評価します。なお、3つ以上の開口があり「包絡開口・等価開口自動判定」とした場合、各開口間で包絡開口が作れなくなるまで繰り返し包絡開口を作成し、包絡できなくなった時点の開口状況で「等価開口とする」と同様の判定を行います。
$l_w$:壁内法幅
$h_w$:壁内法高さ
また、等価開口とする場合の開口寸法は以下のように計算します。
$l'_0\times h'_0=l_1\times h_1+l_2\times h_2$ $l'_0:h'_0=l_w:h_w$$h_1,h_2$ :開口部の高さ
$l_1,l_2$ :開口部の長さ
$h_w$ :壁の内法高さ
$l_w$ :壁の内法長さ
$h'_0$ :置換した開口部の高さ
$l'_0$ :置換した開口部の長さ
フレーム内雑壁のモデル化
壁が開口により耐震壁にならなかった場合、周辺のRC部材およびSRC部材の断面性能に壁が考慮されます。複数開口が存在する場合は、包絡開口により壁の長さを考慮します。剛性に用いる壁の長さは構造階高および軸間距離の1/2の位置における包絡開口までの距離を採用します。また、柱の回転により壁が傾斜して部材に取り付いている場合には傾斜を無視し軸上に壁断面があるものとして計算します。
開口の位置は意匠階高を基準として算出します。 上下の梁が鉛直方向に傾き、下層節点または上層節点においてZ座標が異なる場合は、以下のように認識します。
- 上層節点は、Z座標の小さい方を基準にします。
- 下層節点は、Z座標の大きい方を基準にします。
耐震壁(平面応力要素、板要素)の断面性能
指定により、耐震壁を平面応力要素および板要素としてモデル化することが可能です。
面要素は節点位置に対して配置されます。
面要素でモデル化した場合、付帯柱はピンとなりません。
また、指定により周辺の柱梁および面要素をメッシュ分割することが可能です。